ドルの価値と外国為替円相場
「ドルが高すぎるためにアメリカの経常赤字は維持し得ない」と言われます. この場合のドルとはドル/円レートではなく,たいていの場合FRB(米国連銀)の算出するドル指数を想定しています.これはアメリカの貿易に占める各国のシェアで加重したもので, 相手国のウェイトはカナダの17%をトップに,ユーロ(16%),日本(13%),メキシコ(10%),中国(8%)と続きます。実際には,ドル/円レートが10%下落しても,この指数は2〜3%しか下落しないということがほとんどです.理由は,中南米通貨と中国の人民元です.例えば2002年に,アルゼンチンの経済危機を背景にドルが中南米通貨 全体に対して上昇したため,指数に占めるシェアが大きいメキシコペソに対する上昇だけで, 円に対する下落がほぼ相殺されてしまいました.中国も2005年の夏に「より柔軟な」
FX制度への移行を発表しましたが,実質的に対ドルでのペッグ制は続いています.このため,ドル高を是正しようとすればその大部分がユーロと円にしわ寄せされ、 特に対米黒字の大きな日本の円がその標的になりやすいのです.1985年のプラザ合意以前の
FX市場では、アメリカの貿易収支は毎月の一大イベントでしたが、日本の貿易収支は、今よりはるかに少ない注目しか集めていませんでした。貿易収支だけでなく、日本の経済指標全体がほとんど市場から無視されていました。すでに変動相場制に移行しており,外為法も80年には改正されていたにも関わらず、円は通貨として一人前ではなかったことが窺えます。ドル高の是正を目指したプラザ合意により、日米貿易不均衡が為替相場の中で意味を持つようになりました。日本の貿易収支が
FXや
投資信託相場に与える影響は、こうして政治がらみで拡大し、第一期クリントン政権は、円高を不均衡是正の一つの柱としていました。こうした背景から、貿易黒字が縮小しない間は「米国が円安を許容しない」という考えが市場の共通認識になっています。需給そのものとは異なる意味の円高要因です。また、日本の政府自身がそう考えている結果、経済政策を自ら制約しているという見方もあります。例えばある企業が1億円を3ヶ月間ドル預金で運用するとします.今ドルを買うレートより,預金の満期にドルが下がっていたら損をします.このリスクを避けるためにドルの売り予約をすると,ドルが下がればいいですが,反対に10円も上がっていまうと,「どうしてあんな円高の時に売ったんだ!」ということになりかねません.そこで,「円高で損をするのはいやだが,円安になった時の利益を放棄せずに済む方法はないか」という、虫のいいニーズに応えるのがオプション取引です.つまりドル売りなら,「110円でドルの売り予約をする.実勢レートがそれより安ければ予約を実行するが,高かったら実勢で売った方が有利なので予約を放棄することができる」というものです.「選択権付き為替予約」と呼びます.もちろんこれにはコストがかかります。つまりこの企業は将来ドルを110円で「売ることができる権利」を購入するので、この権利の対価をオプション料という形で支払わなければなりません。例えばオプション料が1ドルあたり1円というように、為替レートに換算した形で約定した上で、為替の決済金額とは別に(決済するかしないかわかりませんから)支払います。